中国市場は半減。それでも、訪日消費は過去最高水準だった。2026年4–6月データから見えてきた、インバウンド市場の「中身」の変化
カテゴリー:インバウンド戦略 / 市場動向 / 経営ノウハウ
2026年4–6月。
中国人旅行者による訪日消費額は、前年同期の5,064億円から2,592億円へ、ほぼ半減しました。
ところが同じ期間、日本全体の訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円。前年同期比0.2%増。
市場全体は、ほとんど落ちていません。
中国市場が大きく縮小しているのに、なぜインバウンド消費全体は維持されているのでしょうか。
この一見矛盾した数字を見ていくと、今の日本のインバウンド市場で起きている変化が見えてきます。
それは、単純な「増えた・減った」という話ではありません。
訪日市場を支えている国・地域、そして日本に来る人の消費の仕方そのものが変わり始めています。
だから今、日本企業が見るべきなのも「訪日客全体が伸びているか」だけではありません。
中国市場をどう見るのか。
台湾・香港の成長をどう捉えるのか。
そして、自社は限られた予算をどこに配分するのか。
今回は、観光庁が発表した2026年4–6月期の最新データから、中華圏インバウンド市場で今何が起きているのか、そして日本企業は何を考えるべきなのかを見ていきます。
ポイント①インバウンド市場全体は、まだ縮小していない
2026年4~6月期の訪日外国人旅行消費額は、2兆5,096億円。
前年同期の2兆5,043億円と比べると、0.2%増となりました。
つまり、少なくともこの数字だけを見れば、日本のインバウンド市場全体が大きく落ち込んでいるわけではありません。

ただし、私たちが今回の数字を見て最も注目したのは、2兆5,096億円という総額そのものではありません。
その中身が、かなり変わっていることです。
2025年4~6月期には、中国は5,064億円で全体の20.2%を占める最大市場でした。
ところが2026年4~6月期は2,592億円、構成比10.3%まで低下。
一方、米国は3,848億円で首位となり、台湾は3,639億円で2位まで上昇しています。
つまり、市場全体が維持されていても、企業ごとに受ける影響はまったく同じではありません。
中国人顧客への依存度が高い企業にとっては、全体市場が0.2%伸びていることより、中国市場が約半分になっていることの方がはるかに重要です。
ポイント②中国市場は「なくなった」のではない
中国市場の数字だけを見ると、変化は非常に大きいです。
2026年4~6月期、中国からの訪日外国人旅行者数は97.1万人、前年同期比52.5%減。
1人当たり旅行支出は26万6,753円、前年同期比9.4%増となっています。
ここで面白いのは、
「来る人は大幅に減った。しかし、来ている人の消費額はむしろ上がっている」
という点です。
さらに全目的ベースの平均泊数を見ると、中国客は11.2泊。前年同期より3.3泊長くなっています。

この数字だけから「中国市場は高付加価値層だけになった」と断定することはできません。
ただし、少なくとも企業側は、
「中国客が減った=中国市場をやめる」
という一方向の判断だけでは不十分になっていると思います。
重要なのは、今も日本に来ているのはどのような顧客なのか、自社の商品やサービスと相性の良い層は残っているのかを、以前より細かく見ることです。
中国市場は、単純に「人数」だけで評価する市場ではなくなりつつあります。
ポイント③台湾の存在感は明らかに大きくなっている
今回の数字でもう一つ目を引くのが台湾です。
台湾の旅行消費額は3,639億円、前年同期比27.9%増。
2026年4~6月期では米国に次いで、第2位の市場となりました。 002011761.pdf
1人当たり旅行支出も19万6,641円、前年同期比9.2%増。
訪日外国人旅行者数も184.1万人、17.4%増です。
これは、私たちが今後かなり注意して見ていきたい変化です。
もちろん、台湾が伸びているからといって、すべての日本企業がすぐに中国予算を台湾へ移せばよいわけではありません。
台湾と中国では、情報収集の方法も、SNS環境も、訪日経験も、購買までの意思決定も異なります。
市場が変われば、同じ商品を同じ方法で宣伝するだけでは十分ではありません。
だからこそ、台湾を新しく取りにいくのであれば、「台湾で何のSNSを使うか」より先に、
台湾のお客様は、なぜ日本を選び、何を重視し、どのタイミングで購買を決めるのか。
そこから理解する必要があります。
ポイント④香港も「人数」だけでは見えない市場
香港の2026年4~6月期の旅行消費額は1,452億円、前年同期比7.8%増。
1人当たり旅行支出は22万5,117円でした。
香港は台湾ほど市場規模が大きいわけではありません。
しかし、日本企業が「高付加価値顧客」という観点で市場を考える場合、単純な人数だけで判断するのはもったいない市場でもあります。
今回のデータでも、中国・香港はともに1人当たり旅行支出が20万円を超えています。

たとえば、中国の1人当たり買物代は10万5,914円。
香港は7万1,558円、台湾は6万8,093円です。
こうした違いを見ると、同じ「中華圏」とひとまとめにするよりも、市場ごとに何にお金を使っているのかまで見る方が、企業の施策にはつながりやすいことが分かります。
私たちが今回のデータから一番伝えたいこと
ここまで数字を見てきましたが、私たちが一番伝えたいのは、
「中国が下がったから台湾へ行きましょう」
という話ではありません。
そして、
「中国は依然として客単価が高いから、そのまま続けましょう」
という話でもありません。
企業によって、答えは違います。
中国向けのSNS、販売チャネル、中国語接客、既存顧客をすでに持っている企業なら、その資産を簡単に捨てる必要はありません。
一方で、中国市場への依存度が高く、最近の客数変化が売上に直接響いている企業であれば、台湾・香港を含めた市場構成を今のうちに見直しておく意味はあります。
つまり今必要なのは、「どの国が伸びているか」を当てることではなく、自社にとってどの市場を、どの程度持つのが一番安定するのかを考えることです。
「全部やる」ではなく、自社の強みから市場を選ぶ
ここで私たちは、企業に一律の比率を勧めることはしていません。
中国30%、台湾40%、香港30%、というように、市場全体の成長率だけを見て予算を割っても、自社の商品との相性が悪ければ意味がないからです。
見るべきなのは、少なくとも次のような要素です。
今どの国のお客様が自社を選んでいるのか。
どの市場にすでに顧客・SNS・販売チャネルなどの資産があるのか。
客単価と利益率はどうか。
新しい市場へ移るために、どれだけの時間とコストがかかるのか。
ここは国別ランキングよりも、自社の経営状況の方が重要です。
たとえば、中国の既存顧客が強い企業なら、中国を維持しながら台湾・香港を小さくテストする。
台湾からのリピーターと相性の良い地方施設なら、台湾をもう一段深く取りにいく。
高単価商品を扱う企業なら、人数ではなく1人当たり消費額や購買内容を基準に市場を選ぶ。
同じデータを見ても、取るべき戦略は企業によって違う。
これが、私たちがインバウンド市場を見るときに大切にしている考え方です。
ポイント⑤インバウンド市場は「人数」から「構造」を見る段階へ
もう一つ、今回の観光庁資料で印象的なのが、1人当たり旅行支出の推移です。
2026年4~6月期の一般客1人当たり旅行支出は24.4万円。
2023年以降の四半期推移を見ると、旅行消費額そのものだけでなく、1人当たり旅行支出も高い水準にあります。

私たちは、これからの日本企業にとって重要なのは、単純に「外国人を何人増やすか」だけではないと思っています。
- 誰に来てもらうのか。
- 何を買ってもらうのか。
- 一度来たお客様とどう関係を続けるのか。
インバウンド市場が成熟していくほど、この三つの設計が経営に効いてきます。
中国・台湾・香港を「別々の市場」として見る
中国、台湾、香港は、言語や文化に共通する部分があります。
しかし、私たちはこの三つを同じ市場として扱うべきではないと考えています。
中国には中国の顧客行動があり、台湾には台湾の顧客行動があり、香港には香港の顧客行動があります。
重要なのは、一つの市場に依存することでも、すべての市場へ同時に進出することでもありません。
自社の強みと今持っている資産を見ながら、必要に応じて市場の組み合わせを変えていく。
今回のデータは、その見直しを始める一つのタイミングだと私たちは考えています。
中華圏インバウンド戦略についてご相談ください
Sunflower Luでは、中国・台湾・香港を中心とした中華圏市場について、単なるSNS運用や広告配信だけではなく、
- 「自社はどの市場を狙うべきなのか」
- 「どの顧客層に価値があるのか」
- 「今ある資産をどう活かしながら市場を組み替えるのか」
という経営・マーケティングの上流からご相談をお受けしています。
市場環境が変わっている今だからこそ、一度現在の客層や集客構造を整理したいという企業様は、お気軽にお問い合わせください。
参考資料
観光庁
7「インバウンド消費動向調査 2026年4–6月期の調査結果(1次速報)」
2026年7月15日公表
2026年4-6月期インバウンド消費動向調査
※1次速報のため、今後公表される確報等により数値が修正される可能性があります。