集客施策

中国人旅行者の「探し方」が変わる。 生成AI時代、日本企業が知っておくべき中国独自のAI事情と集客対策

カテゴリー:インバウンド戦略 / 中国マーケティング / 生成AI施策

中国市場向けのインバウンド集客では、小紅書(REDNOTE)、抖音(Douyin)、WeChat(微信)などのSNSが、今も重要な情報接点です。

一方で、生成AIの普及によって、中国人旅行者が「どこに行くか」「何を買うか」を探す方法そのものが変わり始めています。

重要なのは、「SNSからAIに置き換わる」という単純な変化ではありません。AIが情報収集や候補選びの入口に入り、その後SNSや口コミ、公式サイトなどを行き来しながら最終判断する――購買までの情報探索が、より複数チャネル化していることです。

さらに、日本と中国では利用されているAIサービスや情報環境も異なります。日本国内で考えているAI対策を、そのまま中国市場に適用できるとは限りません。

本稿では、中国人旅行者の情報探索行動がどのように変わっているのか、中国のAI環境は日本と何が違うのか、そして日本企業が今から何を確認すべきかを整理します。

1. 中国人旅行者の「探し方」が変わり始めている

これまで、中国人旅行者が日本のホテル、飲食店、観光地、商品などを探す際には、小紅書をはじめとするSNSや口コミプラットフォームで検索し、多くの投稿を比較しながら候補を絞る行動が一般的でした。

しかし生成AIが普及したことで、情報探索の最初の段階にAIを使うケースが増えています。

たとえば、「子どもと一緒に泊まりやすく、駅から近い東京のホテルは?」「銀座周辺で中国語対応があり、記念日に使えるレストランは?」といった具体的な条件をAIに入力し、まず候補を絞ってもらう使い方です。

つまり、以前は消費者自身が大量の情報から候補を探していた場面の一部を、AIが代わりに整理し始めています。

ただし、AIが提示した候補だけで、すべての購買判断が完結するわけではありません。特に宿泊、高級飲食、ジュエリー、美容、医療、ショッピングなど、金額が高く失敗したくない消費ほど、候補を絞った後に小紅書のユーザー投稿、口コミ、企業の公式SNSや公式サイトなどを確認し、「本当に自分に合っているか」「信頼できるか」を確かめる行動が重要になります。

そのため、生成AIはSNSを完全に代替するものではなく、消費者の購買プロセスのより前段階――「候補をつくる入口」に入り始めている、と捉えるほうが実態に近いでしょう。

POINT:AIはSNSの代わりではなく、購買プロセスの「新しい入口」になりつつある。

2. 日本のAI対策を、そのまま中国に適用してはいけない

ここで、日本企業が特に注意したいポイントがあります。

中国では、日本と同じAI環境が使われているわけではありません。

日本やグローバル市場では、ChatGPT、Gemini、Copilotなどを前提に生成AI対策を考えるケースが増えています。一方、中国では豆包(Doubao)、DeepSeek、腾讯元宝、通義千問(Tongyi Qianwen)、Kimiなど、中国市場独自のAIサービスが利用されています。

さらに、消費者が参照する情報源も異なります。中国ではAIだけでなく、小紅書(REDNOTE)、WeChat、大衆点評など、中国独自のプラットフォームが情報探索・比較検討の中で重要な役割を持っています。

つまり、「日本でChatGPTやGoogle向けの対策をしたから、中国でも同じように見つけてもらえる」とは限りません。中国人顧客を獲得したい企業は、中国で実際に使われているAIと情報プラットフォームを前提に、自社情報がどのように認識・提示されているかを見る必要があります。

項目 日本・グローバル市場 中国市場
主なAIプラットフォーム ChatGPT / Gemini / Copilot など 豆包(Doubao)/ DeepSeek / 腾讯元宝 / 通義千問 / Kimi など
主な情報接点 Google検索 / 主要SNS / 生成AI 中国国内AI / 小紅書 / WeChat / 大衆点評 など
対策時のポイント グローバルな検索・情報環境を前提に設計 中国独自の情報環境・中国語文脈を前提に設計

GEOとは何か?

生成AIの回答の中で、自社の商品やサービスが正しく理解され、候補として提示されやすいように情報を整える考え方は、一般にGEO(Generative Engine Optimization:生成AI最適化)と呼ばれます。

従来のSEOが検索結果で見つけてもらうことを重視するのに対し、GEOではAIが自社の情報を理解し、利用者の質問に対する候補として扱える状態をつくることが重要になります。

ただし、中国市場向けのGEOを考える場合も、日本向けの方法をそのまま横展開するのではなく、中国のAI・SNS・情報環境を前提に設計する必要があります。

3. では、日本企業は今、何から始めるべきか?

① 中国の主要AIで、自社がどう表示されているか確認する

まずは社名だけを検索するのではなく、実際の顧客が使いそうな条件で確認します。たとえば「東京でファミリー層に適した高品質ホテル」「渋谷で外国人対応がスムーズなレストラン」などです。自社が候補に入るのか、どのような説明で紹介されるのか、競合はどこが提示されるのかを確認することが第一歩です。

② 公式サイト・SNSなどの自社情報を整理する

公式サイト、公式SNS、FAQ、第三者メディアなどに掲載されている情報がバラバラでは、AIだけでなく顧客自身も自社の強みを理解しにくくなります。サービス内容、対象顧客、特徴、実績、対応言語、店舗情報など、購買判断に必要な情報が明確で一貫しているかを点検します。

③ 小さく検証し、AIだけでなく購買導線全体で見る

最初から大規模な投資をする必要はありません。重要な顧客層、店舗、商品、検索テーマなどを絞り、AI上での露出や説明がどう変化するかを確認します。そのうえで、SNSでの比較、公式サイトへの流入、問い合わせ・予約・来店など、実際の購買行動につながっているかを見ながら改善していきます。

4. AIだけを見るのではなく、中国人顧客の購買プロセス全体を見る

重要なのは、「これからはAI対策だけをすればいい」ということではありません。

中国人旅行者の情報収集は、AI、SNS、口コミ、公式サイトなど複数のチャネルを行き来しながら行われます。AIで候補に入り、小紅書で口コミを確認し、公式サイトで詳細を見て、最終的に予約・来店・購入する――この一連の流れを理解する必要があります。

だからこそ日本企業に必要なのは、単に新しいAIツールを導入することではなく、「中国の顧客がどこで自社を知り、何を比較し、何を根拠に最終的な購入を決めるのか」を理解したうえで、情報と集客導線を設計し直すことです。

生成AIは、その購買プロセスに新しく加わった重要な接点の一つです。今後はAI上での見え方も確認しながら、SNS、公式情報、来店・購買、CRM・リピートまでを分断せずに考えることが、より重要になるでしょう。

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